- 加工のコツ 2019/09/18 更新
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- ミーリング加工
正面フライスは外径が大きく、加工能率の高い便利な切削工具ですが、加工体積が大きいため切削抵抗も大きくなります。正面フライス加工は突き出し量が短く、ワークの剛性が高い場合には難しい加工ではありませんが、突き出し量が長くなると工具の曲げ方向に対して送分力・主分力が生じ、刃先の断続運動でびびりが発生しやすくなり、一気に加工の難易度が上がります。そのため切削条件の設定に悩まれる方も多いのではないでしょうか。
びびりというのは、切削抵抗の大きさと切削方向に影響を受けますが、工具の曲げが小さくなるように切削抵抗を小さくするか、送分力および主分力を小さくすることで、びびりの限界点を高くすること、つまりびびりにくくすることができます。
そこで弊社ではすくい角と切り込み角の異なるミーリング工具を用いて、切削抵抗がどのような特性、数値になるかを測定いたしました。この測定データに基づいて、正面フライス加工のびびりを抑制する3つのポイントをご紹介します。参考として、ホルダの長さによる加工限界も評価しています。
切削工具の仕様決定にもお役立ていただけると思いますので、ぜひご覧ください。
①すくい角を大きくする
図1はすくい角が0°と30°のチップを使用した時の切削抵抗の違いを示しています。すくい角を0°から30°に大きくすることにより、切削抵抗の主分力(主軸回転方向の力)が33%、送分力(送り方向の力)が37%、背分力(主軸を突き上げる方向の力)が80%減少することが分かります。このように、すくい角を大きくすることで切削抵抗が小さくなり、びびりを抑制することができます。ただし、ワークの材質によっては、すくい角を大きくしても切削抵抗が変わらず、すくい角の効果が得られにくい場合もあるので注意が必要です。

図1:すくい角違いによる切削抵抗の比較(被削材:S50C)
②切り込み角を小さくする
自社製の切削工具を製作し、切り込み角が15°、45°、75°、90°のチップを使用した時の切削抵抗の違いを調べました。その結果が図2です。切り込み角が大きくなっても、主分力は、殆ど変化がありませんが、送り分力は切り込み角が大きいほど大きくなり、背分力は、切り込み角が大きいほど小さくなることが分かります。
びびりは送り分力が大きいと曲げにつながり、ホルダが長い場合、びびりやすくなります。したがって切削抵抗の方向は、送り分力が小さく、背分力が大きくなるようにするとびびり抑制に有効となり、切り込み角の小さい形状の工具がびびりの抑制には有効といえます 。


図2:切削抵抗の違い(被削材:S45C)
③同時切削刃数が変化しないようにする
正面フライスのような多刃工具の一枚一枚のチップに注目すると、切削と非切削を繰り返していることが分かります。同時切削刃数とは、同時にワークを切削しているチップの数のことを示し(図3)、同時切削刃数が変わると切削抵抗が大きく変動(断続)するため、びびりが発生しやすくなります。つまり、びびりを抑制するには、正面フライスの刃数や正面フライスとワークの相対位置を調整することによって、同時切削刃数が変化しないようにすることが大切です。
ただし、同時切削刃数が多くなると切削抵抗が増えます。切削抵抗の大きさ・向きを考慮しながら、同時切削刃数の決定が必要となります。


図3:同時切削刃数と切削力の変動の関係
※住友電工ハードメタル株式会社様「切削工具 総合カタログ 2019-2020 テクニカルガイダンス資料」より出典
④ホルダの長さによる加工限界について
工具だけでなく、ホルダがびびりに対してどのように影響するのかを、ホルダの長さを変えて、びびりが発生する値を測定しました。正面フライスカッタ(Φ63、切り込み角45°)をホルダ長60mm、90mm、150mmの3種類のホルダに取り付け、びびりの発生値を調査いたしました。
ホルダ長60と90では、主軸出力の100%近くまで問題なく加工ができました。しかし、ホルダ長150では、約1/3の除去量でびびりが発生しました。短いホルダの場合は主軸出力の最大値近くまで加工できますが、長いホルダではびびりが発生する値が限界となることが分かります。 また、ホルダ長150で、すくい角を8°と23°で比較を行なったところ、すくい角23°の方が約1.7倍、切削除去量が多くなりました。ホルダ長が同じでもすくい角を大きくすることで、送分力と主分力が小さくなり、びびり限界を高めることができます。

図4
工作機械や切削工具は日進月歩で進化していますが、びびりや工具折損などに代表されるように生産現場で発生する課題は昔から変わっていません。すくい角、切り込み角、同時切削刃数という基本要素が切削抵抗に与える影響をしっかり理解し、課題解決や加工目的に合わせて設定することが大切です。弊社は切削現象の基本を注視し、さまざまな実験を行っています。加工でお悩みの方はぜひお問い合わせください。





