すべての工業製品は資源から原材料が抽出され、加工・置換され、その後製品として製造されます。そのなかで、あらゆる製造業の原点となっているのが、機械を生み出すための機械である「工作機械」です。ペットボトルから宇宙ロケットまで。私たちが暮らす豊かな社会は、工作機械によって支えられています。
材料を必要な形状・精度に効率よく加工する。それこそが、工作機械の役割です。「切る」「削る」「磨く」。その機能はシンプルですが、あらゆる機械や製品は、部品から作られているため、工作機械の精度が最終製品の精度・品質に大きく影響します。
製品ができあがるまでの過程において「工作機械」「工具」「材料」という3つの要素が重要な役割を担っています。自動車を例にとって考えてみましょう。自動車の部品は、工作機械で直接素材を加工したり、工作機械で削り出した金型を用いて素材を成形して作られています。そして、その材料となる素材を作るためにも工作機械が必要です。この先自動車がどんなに進化しても、この構造は変わりません。どれほど時代が進んでも、工作機械はこの世界に欠かせないのです。
暮らしや街を彩る、様々な洋服。綿や麻といった天然繊維やポリエステルなどの化学繊維は、機械で加工され「衣服」へと姿を変えていきます。
ポリエステルといった化学繊維の原材料は石油です。深さ数千メートルにも及ぶ海底に眠っている石油を掘り出すために使われるドリルや、その基地となる掘削リグ。これらは工作機械で加工された様々な部品によってできています。
海底から取り出された石油は紡糸(ぼうし)機械によって、化学繊維に生まれ変わります。その紡糸機械の部品の多くを作っているのも、もちろん工作機械です。
糸を織ったり編んだり、熱や力で加工することによって、糸は布になります。出来上がった布を今度は縫製機械で加工すると素敵な衣服が出来上がります。もうお分かりですね。織機も編機も縫製機械も、すべては工作機械から生み出された部品でできています。
このようにして一着の衣服は作られていきます。また、「紡糸」から「縫製」の工程は、綿や麻といった天然素材であっても同様のため、工作機械の役割は素材に関わらず大きなものとなっています。
家族や友人とテーブルを囲み、会話が飛び交う食事シーン。この何気ない風景にも一役買っているのは工作機械です。工作機械は、あらゆる料理が食卓に並ぶまでの流れを支えています。
「茶碗」の原材料となる「土」や「稲」。それらを採取する産業機械では工作機械で作られた金属部品が多数活躍しています。
採取された「土」は泥状にされ、石膏でできた型に流し込まれ、茶碗の形になっていきます。そのうえで“型” 自体も、さらに流し込むための機械も工作機械の力無くして存在しません。
そして茶碗の最終仕上げをする研磨機や白米を炊く炊飯器も、その製造工程で工作機械は欠かせません。
食卓に並ぶ、一杯のご飯。たったこれだけでも、その工程を辿ると工作機械が何度もでてきます。さらに、お米だけではなく、小麦や野菜、魚など、どのような食材の場合でも、収穫や加工の工程で工作機械が関わっています。
人が快適な暮らしを送るうえで、“移動すること”は欠かせない要素です。例えば街中を行き交う、たくさんのクルマ。その一台一台を支えているのも工作機械の存在です。
およそ3万点の部品から作られている自動車。そのほとんどが金属部品であり、工作機械によって生み出されています。さらに、金属部品だけでなくタイヤといったゴム製品や内装に使われるプラスチック製品も、工作機械によって削り出される“金型”から生まれています。
世の中では常に精密な製品が求められています。精密な製品を生み出すには高精度な部品が必要です。 それはつまり、その部品を加工する工作機械にも高い精度が求められているということです。 工作機械の精度が製品の品質に大きく影響するのです。工作機械は肉眼で確認することの難しい μm(マイクロメートル)以下の単位で削ることができます。