アディティブマニュファクチャリングの産業的な起源は、1980年代中頃にさかのぼります。1984年に、米国の物理学者チャック・ハルが光造形法の特許を取得しました。これは、レーザビームによってタンク中の液体プラスチックを層ごとに硬化する方法です。この材料の積層によって、望みどおりの部品を作れるようになりました。複雑な形状でも、内部に細線構造がある部品であっても、3Dモデルデータから直接製作することができます。
アディティブマニュファクチャリングは、設計において無限の自由が得られるため、光造形法の誕生以来、世界中の研究者は胸を躍らせ、まったく新しい加工方法や新素材の開発を活発に進めました。今では、使用できる材料は、プラスチックだけでなく、セラミック、繊維素材、さまざまな種類の金属など広い範囲にわたっています。しかし、専門家によれば、アディティブマニュファクチャリングはまだその秘めたる可能性の初期の段階にあると言われています。
したがって現時点では、アディティブマニュファクチャリングとは何か、という問いに対しては、その多様性をすべて網羅して答えを出すことも、最終的な答えを出すこともできません。しかし、少なくともそれらには共通点があり、そこから導き出された定義があります。この定義によれば、アディティブマニュファクチャリングとは、3Dモデルデータを基に、材料を結合して造形物を実体化する加工法であり、一般的には造形層を積み重ねる方式と定義されています。さらにISO/ASTM 52900では、商業的に利用可能なアディティブマニュファクチャリングシステムを7つの方式に分類しています。それらの違いは、造形物の積層方法の違いによります。
DMG MORIは、アディティブマニュファクチャリングにおいて、LASERTEC SLMおよびLASERTEC DEDまたはLASERTEC DED hybridを提供しており、SLM(パウダーベッド)方式およびDED(指向性エネルギー堆積)方式のユニークなターンキーパートナーとして知られています。(出典:DMG MORI)
一部の積層方式は、インクジェットプリンタに似ているため、3Dプリンティングという用語もアディティブマニュファクチャリングを表現するものとして一般的に使われています。基本原理は、素材やワークを造形するために材料を結合する方式によって分類されます。たとえば、使用される素材としては、液体、粉体、粘性液体、固体があります。使用する技術に応じて、これを溶融、焼結、積層、接着、重合することによって硬化させて造形します。
国際規格であるDIN EN ISO/ASTM 52900では、アディティブマニュファクチャリングシステムを7つの方式に分類しています。この分類は、材料の造形層を作る方式の違いによるものです。
ADDITIVE MANUFACTURING TECHNIQUES | アディティブ マニュファクチャリング方式 |
Vat Photo Polymerization | 液槽光重合 |
Power Bed Fusion | 粉末床溶融結合 |
Binder Jetting | 結合剤噴射 |
Material Jetting | 材料噴射 |
Directed Energy Deposition | 指向性エネルギー堆積 |
Sheet Lamination | シート積層 |
Material Extrusion | 材料押出 |
アディティブマニュファクチャリングは、形状の多様性や、幅広い材料など多くの利点があるので、機械、金型、医療、航空宇宙など多くの産業分野ですでに確固とした地位を築いています。しかし、将来的な発展性という観点で見れば、この技術はまだ初期段階と言えます。アディティブマニュファクチャリングは、工業生産において大きな変化をもたらす力を持っていると言われています。それは、個々の顧客特有の製品を、迅速かつコスト効率よく生産できるという可能性を秘めているからです。この技術が成熟する過程において重要な項目として、材料、造形サイズ、精度、信頼性、加工再現性があります。また、間接的な課題としては、後加工の自動化、アディティブマニュファクチャリングおよび試験プロセスの標準化、そして、オペレーターとエンジニアのトレーニングという側面もあります。
また、アディティブマニュファクチャリングは、工業だけにとどまるものではありません。インプラントや人工関節の製作の他に、医療分野では、診断、外科手術などへの活用があります。このほかにも「バイオプリンティング」の将来性にも、大きな期待がもたれていますが、人体の細胞の「プリンティング」は、まだ基礎研究の段階です。
建築や建設におけるアディティブマニュファクチャリングは、実用化にかなり近づいています。建設デザイン用の設計モデルの製作は、すでに一般的になっており、家の骨組みの造形も、もはや夢物語ではありません。特にこの分野においては、アディティブプロセスの生産性、自動化の可能性および環境適合性などの側面からも利用が高まっています。
さらに個人の間では、アディティブマニュファクチャリングの利用が進んでいます。3Dプリンタがディスカウントストアで販売されており、例えば、自分のフィギュアを作ったり、機械工作を趣味とする人の間で使い方のノウハウやデータを交換するコミュニティが出来ていたりします。このように社会においてアディティブマニュファクチャリング技術やイノベーションに対する関心が高まることも、アディティブマニュファクチャリングの普及の重要な効果の1つです。またアディティブマニュファクチャリングは、生産で消費されるエネルギーと材料が少なく、廃棄物も少ないので、環境保護にも大いに貢献できると考えられています。