物流(生産、販売)

環境に配慮した物流の推進、物流2024年問題などへの対応として、サプライチェーン全体で物流の効率化に取り組む必要があると考えています。当社は以前より集約輸送や、繰り返し使用可能なリターナブルパレットの使用など、環境に配慮した物流に取り組んできました。DXを活用し、部品納入時の物流効率化、ドライバーの積載・荷下ろしにかかる当社事業所での滞在時間削減など様々な取り組みを行っています。

当社の物流は、工作機械の生産や修理復旧に必要な部品を調達する「調達物流」、調達した部品を国内外の生産拠点の組立工程に供給する「生産物流」、完成した製品やパーツをお客様にお届けする「販売物流」で構成されています。それぞれの物流で、DMG森精機、仕入先企業、輸送事業者との緻密な連携によって環境や社会に配慮した運用を行っています。

①調達物流

集約輸送の開始

2015年から当社が管理するトラック便を運行し、仕入先企業の部品を一括混載して引き取る「集約輸送」を行っています。仕入先企業が多く集中する地域に集荷拠点を設け、仕入先企業には納入指定日に合わせ集荷拠点まで部品を搬入していただき、集荷拠点からはDMG森精機が当社事業所まで輸送します。またトラックの積載率が常に100%になるよう生産計画に応じて便数の調整を行い、集約輸送と連携する形でミルクラン輸送を並用することで、計画的・効率的な調達物流を実現しています。これにより工場内への流入車両台数も削減でき、構内の安全性向上にもつながっています。さらに集約輸送によって調達物流のトラック便数が減少し、CO2排出量の削減にも貢献しています。

DMG森精機の集約輸送網

②生産物流

海外工場向け生産部材の輸出

海外工場向けの生産部品の輸出は、年間2,737t(2023年実績)を供給しています。2014年には生産部品の輸出専門工場を立ち上げ、欧州・北米・中国・インドの生産拠点へ日本開発機種の部品キット、刃物台や主軸ユニットなどの内製品を供給しています。物流品質を自社管理できる体制を構築することで、リードタイムの短縮、物流費の低減を実現しています。

リターナブルパレットの利用

生産部品の輸出容器には、スチール製のリターナブルパレットを用いています。以前は、木箱や木製スキッドで梱包して出荷していましたが、木材の廃棄処理が必要なことや積載率が低いこと、梱包時に木屑が混入する恐れがあるなどの課題がありました。そこで当社ではスチール製のリターナブルパレットの運用を開始しました。このリターナブルパレットは、海上コンテナのサイズを基準として、コンテナ内に無駄なスペースを作らない設計としています。この施策により、木箱を使用していた時よりも積載率が向上し、出荷コンテナ数を約70%削減することができました。また、スチール製のリターナブルパレットは、繰り返し使用可能なため、2023年で294tの使用木材の削減にもつながりました。

<リターナブルパレット種類>
A2:小~中サイズ鋳物部品・機器
B2:大サイズ鋳物部品・ユニット・機器
B3:     〃
E1:CMX マガジン/ATCユニット
F1:板金部品
G1:主軸ユニット
H1:プロテクタ
J1:ATCユニット

参考)J1パレット立体図
梱包 出荷(バンニング)

コンテナのクリーン化

近年、問題となっている特定外来生物のヒアリ対策として、使用前に出荷する全てのコンテナに対して、コンテナ内外の目視確認、コンテナ内への殺虫材噴霧を行い、作業実績管理表で実施確認を行っています。

③販売物流

国内輸送での取り組み

日本国内のお客様向けには、当社事業所から輸送事業者のトラックでお客様の工場に直接輸送しています。お客様のもとへ大切にお届けできるよう、輸送中の傷付き防止のために養生布を使用。また、トラックシートは、当社のロゴをデザインした帆布を使用しています。さらに出荷先の地域やその気候に応じて、透明の防水ポリシートで密閉梱包した上で、乾燥剤を同梱して錆の発生を防止しています。

製品を出荷するトラック

海外輸送での取り組み

海外のお客様向けには、名古屋港にトラック輸送したのち梱包作業を行い、コンテナ船で世界各国に海上輸送しています。その際、製品保護のため、エアキャップ(キズ防止の緩衝材)、バリヤシート(乾燥剤を入れエアを抜いた状態)、防水ポリシートの3層を施すことで、防塵・防錆対策を行っています。梱包には気密性に優れたスチールケースを使用。耐久性も高く、湿気が出ないため、高い保護性能で輸送時の製品を守ります。また、梱包サイズや重量も低減でき、輸送効率を高めることができます。加えて、使用後のケースは鉄スクラップとしてリサイクル可能です。

スチールケース梱包
バリヤシートと防水ポリシート梱包

物流品質証明書の発行

製品や部材の海外輸出は、当社から出荷後、長期間にわたって多数の運送事業者を経てお客様にお届けしていますが、この間に軽微なキズや錆、雨水浸入等の不具合が起こる場合があります。当社ではこのような不具合がどこで発生したのかを明確にするために、梱包、入庫、出荷の各工程において、運送事業者に品質証明書を発行してもらい、不具合が発生した工程を特定し、追跡できるようにしています。さらに、各工程での品質確認作業を徹底し、万が一不具合が起こったとしても迅速な対応ができる体制を整えるなど、品質管理体制を強化することで物流品質を高めています。

輸出の流れと品質証明書

品質証明書の種類と要件

物流2024年問題への対策

2024年4月より適用されたトラック運転手の改善基準告示により、今後ますますサプライチェーン全体の物流効率化が必要と考え、様々な取り組みを行っています。

納品時の滞在時間削減

製造現場の課題解決をデジタル化により支援する、製造支援アプリケーション作成プラットフォーム「TULIP」を活用し、到着から検収完了までの作業工程・時間を記録・分析することで問題点を抽出。ドライバーの事業所滞在時間が1時間以内になるよう、置き配の導入や、集約輸送便への参加、作業の見直しなどの対策を行っています。
置き配の場合は荷卸しが完了次第帰社いただけるため、これまで検収作業完了まで待機いただいていた時間を削減することができます。
また、置き配や集約輸送便への参加が難しいパートナー企業へは個別に対策を立案して、滞在時間の削減に取り組んでいます。

置き配の導入

荷待ち・荷役作業の時間削減

荷待ち・荷役作業に要する時間を削減するため、出荷場のレイアウト変更や駐車スペースの拡充、区画割りの変更、通路拡幅のための工場内のレイアウト変更を実施。トラックバースや作業スペースの拡充に取り組んでいます。

トラックヤード、セキュリティーゲートの導入

ドライバーの待機・休憩場所として活用いただけるよう、トレーラー5台・トラック3台が駐車可能なトラックヤードを2023年10月に設置。また、伊賀事業所に、ETC車載器番号を利用して入場可能なセキュリティーゲートを設置し、現地での記帳手続を省略することでスムーズに入門していただけるようになり、混雑の緩和にもつながっています。

トラックヤード
セキュリティーゲート